ブログ(人事戦略)

中国赴任(任地の文化を学ぶ)

赴任者は現地の文化を学ぶ必要があります。

文化を学ぶには、3段階の学習過程があると言われます(※)

1 観察 (attention)

現地の国の人がどのように行動するのかを注意を払って見る。次にそれを理解すること。さらに人は、通常、他の人の行動を観察し、自分で考えてみた上で、それを自らやって見るかどうかを判断します。文化によって行動が異なることを受け止めることはもとより、このような文化的差異を慎重に観察することが大切です。

2 記憶 (retention)

異なる文化に接して(学習して)、自分が何を見てきたのか、文化に関する自身の認知マップを構築していきます。また、その行動はいつどのような条件で許されるのか、それは外国人がとってもよい行動なのか、そう行動しない場合の制裁はどのようなものになるのか、などを理解します。これは、任地で行動をしていけば無意識に自然に反応できるようになります。同時に、なぜ現地はそのような行動に価値をおくのか、そしてどのようにしたらこのような行動を適切に再現できるのかを理解していきます。

3 実践

新しい取り組みを行います。再現することが必要な行動を繰り返し練習します。(赴任前の練習)あるいは、現地における実践。

以上を繰り返しながら、赴任者は、任地の文化を学ぶことになります。

言い換えるならば、赴任者の「観察力」「理解の仕方」「行動力」によって学習の成果が異なるということです。

もちろん、以前に異文化経験のある人は有利となります。しかし、経験の量もさることながらその質が大切であることは言うまでもありません。海外勤務経験が多ければ必ず適応できるとは限りません。結局は、学習の質やその人の学習能力の差が、適応の差につながっていると思われます。

話は変わりますが、日本国内でも職場のダイバシティーが進んできました。多様性に接する機会は以前より多くなりました。すでのそのような場の適応や学習においても、どうやら個人差が生まれているようです。個人の能力や特性が、文化や多様性への適応に影響しているのです。

表面的な文化の差異ばかりにとらわれるのではなく、異なる文化を学ぶことは、個人、つまり自分自身を見つめ直す機会にもなりそうです。

(※)Black and Mendenhall. (1990) “Cross-Cultural Training Effectiveness.” Academy of Management Review 15

中国赴任(転勤・赴任)

最高の技術をもった人間が、かならずしも最高の異文化適応能力を持っているわけではない。海外赴任に関して、短絡的な技術志向の人選に問題がありそうだ。

Blackよれば、海外赴任の候補者を選ぶ時に「数名の候補者を頭に思い出しただけで他の人を探すことをやめてしまい、同等の技術水準を持つ異文化適応の力を有している候補者の存在をどうしても見落としてしまう」と指摘されている。

海外赴任にかかわらず、日本国内の配置・異動に関して、人事権の所在はさすがに明らかになってきているが実際の人選のルールや方法については不明瞭である。また、候補者に求められる能力については後日触れる。

先のBlackは「配偶者や家族の状況の考慮(日本はこの点は皆無。妻が夫の意思決定を左右しないと思っている)が必要だ。家族の積極的な意思と任期を首尾よく満了できる能力が、派遣者の好業績と任務達成に大きく影響する。そのため、赴任に際して家族へのインタビューも必要。企業が配偶者の意見を積極的かつ可能性が高まる研究結果をもっている。家族はサブシステムなのだ」と指摘している。

この数年で転居を伴う異動の是非について議論が生まれている。現在は共働きの増大はもとより、個人の権利の尊重も含め問題が提起されている。

日本国内でも「転勤」の問題がここ数年で取り上げられている。例えば、 www.works-i.com/pdf/w_134.pdf

となると海外赴任の人選、任命はより複雑な問題になる。昭和の時代ならまだしも、国内で十分に魅力ある生活が実感できる成熟した社会になった日本であればなおさらだ。

 

赴任者はこのことを実感しているはずだ。

何よりもこれは「当事者の前向きな問題提起」が期待されるテーマといえる。

 

参考

J.S.ブラック他(1999)白木他訳『海外派遣とグローバルビジネス』

リクルートワーク研究所『Works134号』特集「転勤の行方」 www.works-i.com/pdf/w_134.pdf

中国赴任(赴任者の忠誠心)

本国と海外子会社との板挟みに赴任者は悩む。

忠誠心によって示したマトリクスがある。図:Black, Gregersen and Mendenhall(1992)

ブラックらは、「右下のマトリクス」に高い忠誠心を示すことが海外赴任者として望ましいと論じた。もちろん容易なことではないが、その領域にありバランスを保つことが必要だと指摘した。ちなみに、上記は主に米国の赴任者の実態をもとにした研究である。

さらに、ブラックらの指摘によれば、

<左上のマトリクス>は、

「雇われ用心棒型のフリーエージェント型」

親会社、現地会社ともに低いコミットメント・レベルであり、自分のキャリアに最大限の関心がある。

背景:帰国して出世の階段をあがることは難しい。海外で保持していた地位、自由、重要さを伴う職は帰国後得られないだろうという予見のもと進んで帰任しない。海外勤務のパッケージによる特別報酬の処遇や金銭的な魅力。したがって、海外において転職をする。時に予告なく辞職するので困る。

一方、親会社の国際部門の海外専門家ではなく、すでにキャリアが一定以上で高止まりしている人。海外勤務前から、親会社にコミットメントがない。親会社で行き場がなく、海外の勤務が状況を変えるのではないかとの期待や報酬に対する魅力で動く。(自薦)本国でのコミットメントが低いので、現地事業所でも同じ結果になる。キャリアが高止まりしたフリーエージェントである。海外勤務を望む者の中には、適切な動機を持っていない人もいる。

そのことでグローバル事業が社内で低い評価となれば、有望なマネジャーが海外勤務に応募する可能性が低くなる。

 

<右上のマトリクス>は、

「現地志向型派遣者(ゴー・ネイティブ)」

現地には強い忠誠心を持ちながら、本国にはもっていない。異文化に適応する能力がある人はなりやすい。

本国事業所から長い期間遠ざかって過ごすと、自分のアイデンティティが親会社と結びついているという感覚が希薄になる。国際部門があり、国際キャリア専門職を持つ企業などによくある。

現地志向になると、本国からの要望を自分で適切でないと判断したら抵抗したり、やり過ごす、本社と戦うことで本社の評価は下がるが、現地従業員の信望と忠誠心を勝ち取ることができる。本国帰国後、責任小さく、評価もされないので、会社を辞める可能性がある。

本国側のマイナス面では、すでに多くの投資をしている赴任者のローカルの知識や経験をグローバル戦略に組み入れたり、後継者育成の計画に参加させる機会をのがす。

プラスは、現地に合わせた製品やサービス、管理上のアプローチができるようになる。

<左下のマトリクス>は、

そのまま書かれているとおりである。

さて皆さんは、赴任地でどのような忠誠心を持つのでしょうか?